アマトリチャーナ
アマトリチャーナは、ローマの北東の町”アマトリーチェ(Amatrice)”の名物です。
そして私はイタリア修業時代のまだ右も左も分からないころに、
修業中のシチリアの小さなバルで出会ったローマ人シェフに、料理人として成長できるきっかけを与えていただきました。
パレルモでの忘れられないローマ人シェフとの会話
ローマと言えば?
という話でパレルモを訪れたローマ人シェフと盛り上がりました。
実はその時はまだ彼がシェフだとは知らなかったのですが、あとで聞いたのです。
私がローマを一人旅した際の話や、
お互いの友人の話を、
寒空の下で少し冷えたワインを片手に話していました。
当時はまだイタリア語があまり上手に話せなかった私ですが、
少しお酒が入ると普段よりもイタリア語が喋れるのです。
私は私が知る限りのローマのことを、
ローマ出身のローマ育ちの現ローマ在住のイタリア人を前にして、
これはこう、これはこうと
厚かましく話をしておりました。
拙いイタリア語ではありましたが、
熱と勢いのある私の言葉にその寛大なシェフは、
「Sì sì (そう、そうだね)」と、耳を傾けてくれていました。
ちなみにSìは「シー」ではなく「スィー」の音に近いです。
話者によっては「シー」と聞こえないこともないです。
そして私が
「そう、それでさ、アマトリチャーナだよね、ローマと言えば」
と話をし始めました。
するとシェフが
「そうだな、君はどうやって作るんだ?」
と、まったく期待してない表情で聞いてくるんです。
私は心の中でアマトリチャーナならもう何皿も作ってきた
と自信満々に、
「まず、フライパンにオリーヴオイルを入れて皮付きのまま潰したにんにくをいれる、香りが出てきたところで薄切りにした玉ねぎを…」
とまだ話の序盤で易しい面持ちのローマ人シェフの顔が激変しました。
どうやら失望してます。
「ん?にんにく?玉ねぎ?にんにくも入れるのに玉ねぎも入れるのか?」
私はそれまで、
なんの疑いもなくイタリア料理にはにんにくを多用しておりました。
そうなのです、
この時知ったのですが、
イタリア人はそんなににんにくを多用しません!
むしろにんにく好きなイタリア人は稀です。
少なくとも私が出会ってきたイタリア人の中にはあの香りを苦手とする人の方が圧倒的に多いです。
当時は知りませんでした。
日本ではイタリア料理と言えばにんにくのイメージが強かったので。
パスタ作りのポイント7つの話はここから
それではここで冒頭で申し上げました通り、
パスタ作りについてのポイントを7つ
順番に紹介させていただきます!
パスタ作りのポイントその1:にんにくは多用してはいけない
もし今までパスタ、またイタリア料理といえばにんにくを多用しているという方がおりましたら、
”本場”を目指すのであればですが、出来るだけ使わないか、もしくは量を減らしましょう!
では、シェフから聞いたアマトリチャーナのレシピ及び作り方です。
分量はご参考までに。
アマトリチャーナの作り方(1人前)
①まず好きな大きさに切ったグアンチャーレ40gをフライパンで炒めます(油は適宜)。
焼き色がついて良い匂いがしてきたらボールやお皿にグアンチャーレを取り出します。
フライパンには旨味がたくさん残っておりますので、白ワイン100㏄で洗いましょう(フランス語でデグラッセといいます)。
その旨味たっぷりの白ワインもボールに綺麗に移しておきましょう。
②①のフライパンに、繊維に沿って薄切りにした玉ねぎ1/4玉をオリーヴオイル大さじ1~2で炒め、しんなりしたところでトマトソースを投入します。
※トマトソースはカットされたトマト缶や、ピューレ上の瓶のものがいいかと思います。分量はトマトソースの味の濃さや塩味でことなりますが、おおよそ100g~120g程度でしょう。お好みでフレッシュバジルを1、2枚加えても美味しいですね。
※玉ねぎに関しましては、入れなくても問題ありません。
入れない場合は、全体の甘みを考える必要があります。
③トマトソースが煮詰まってきたら、別鍋で炒めたグアンチャーレ、取り置いた白ワインを加えます。
味見をして塩味と甘味を整えます。
塩味は盛り付け時にペコリーノ・ロマーノをかけるため、
若干薄いな?塩が少し足りないかな?と感じるくらいで十分です。
甘味に関してはお好みですが砂糖を少しだけ加えるのも一つです。
砂糖での甘味調整は時間短縮にもなり一つの手段ですが、
健康面の観点から気にされる方ははちみつ、または甘く炒めた玉ねぎや香味野菜で代用してください。
④パスタを茹でます。
※パスタですが、太めのスパゲッティやブカティーニという穴の開いたロングパスタ、ペンネやリガトーニが相性良いです。
これは今まで紹介しているカチョエぺぺやグリーチャも同様です。
茹で時間よりも2分早く茹で上げます。
③の温かいソースに加えます。
少し和えて水分が少なければ茹で汁を加えますが、そこで
パスタ作りのポイントその2:茹で汁の塩分濃度に注意
塩分濃度ですが、作る人の考え方によって様々かと思いますが、
私はトマトソースのパスタを作る際にはあまり塩分濃度は高くしません。
0.3%くらいで十分です。
トマトソースのパスタは水分調整で茹で汁を加えることが多いのですが、この時塩分濃度が高いと、茹で汁を加える度にソースはしょっぱくなります。当然ですよね。
ただし塩を加えないとトマトソースのノリが良くなりません。
この辺りは何度か作っていくうちに感覚で分かるようになります。
始めは気持ち薄いくらいから試してみて下さい。
⑤パスタの硬さがお好みであればお皿に盛り付けます。
そして、チーズを振り掛けます。
ペコリーノ・ロマーノや、すでにすりおろしてあるパルミジャーノ・レジャーノ、食卓用の粉チーズ(パルメザンチーズ)でも、お好みの量をかけ、粗く挽いた黒胡椒をかけます。
贅沢に香り高いオリーヴオイルを気持ち多めにかけて出来上がりです。
上の写真のアマトリチャーナは黒胡椒がかかっていませんが、
好きな方はお好みの量を挽いてください。
パスタ作りのポイントその3:細かいことは気にしない
パスタを作る際には神経質になり過ぎず、細かいことは気にしません。
例えば神経質に何は何グラムでなければいけない!
などの考え方は基本的に必要ありません。
と言いますのも、
パスタはイタリアではマンマ(お母さん)がささっと作ってくれる家庭料理です。
日本人は麺好きの方が多いですし、
パスタは手軽に作れるのでご家庭で召し上がる機会も多いかと思います。
もちろん現地や日本のトラットリア(一般的なレストラン及び食堂)やリストランテ(高級レストラン)では、これでもかというくらい美味しいパスタに出会えます。
そこで提供されるパスタはマンマのパスタとはまた別の味わいです。
しかし現地のマンマのパスタを頂く機会があると、
すごく落ち着いたりします。
日本では高級なイメージもあるパスタですが、基本的に家庭料理がベースです。
お母さんが作ってくれるカレーや味噌汁と似ているかもしれません。
細かいことは気にしないという点についてですが、
日本人の皆様が忙しい日々をお過ごしの中で、
例えばこのような場面があったとします。
「時間無い、卵かけごはんにしよう、醤油こんなもんか」
「味噌汁作らないと。わかめと豆腐の味噌汁にしよう!」
「夜のカレーライスに福神漬け。そもそも本当に福神漬けでいいのかな?らっきょう?
あ!そろそろご飯炊かなきゃ」
これをイタリアのマンマになったつもりで変換してみましょう!
「時間無い、卵かけごはんにしよう、醤油こんなもんか」
↓
「パスタ(またはリゾット)作ろう、チーズをバーっと、バターをどさー入れて、よしこれでいいわ」
「味噌汁作らないと。わかめと豆腐の味噌汁にしよう」
↓
「ミネストローネ作らないと。ズッキーニにパプリカ、あとトマトね」
「夜のカレーライスに福神漬け。そもそも本当に福神漬けでいいのかな?らっきょう?あ、ご飯炊かなきゃ」
↓
「夜のピッツァにバジル。バジルでいいかしら?オレガノ?あ、ピッツァの生地発酵具合はどうだろう」
イメージはこのような感じです。
つまり、
卵かけごはんや味噌汁、カレーライスを作る時の気分でパスタやイタリア料理を作ると
うまくいくことが増えると思います。
以上を踏まえてようやくカルボナーラの話に戻らさせていただきます。
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