コンソメとは。

スープ

スーパーで「コンソメ」と書かれた箱を手に取ったことのある人は多いだろう。

お湯に溶かせばすぐにスープになり、料理の味をまとめてくれる便利な存在だ。
一方で、フランス料理で語られるコンソメは同じ名前でありながらまったく別のものとして扱われている。

顆粒コンソメは、完成された味を“足す”調味料だ。
短時間で結果を出すために、旨味や塩味、香りがあらかじめ設計されている。
忙しい日常の中では、これほど心強いものはない。
対して、フランス料理におけるコンソメは味を足すためのものではなく、素材から“選び出す”料理だと言える。

骨や肉、野菜を水から煮出し、濁りを取り除き、時間をかけて澄ませていく。
その過程で得られるのは、味の強さではなく芯のある繊細さだ。
早く仕上げようとすれば、必ず雑音が混じる。
火を急がせれば濁りが出るし、手を出しすぎれば構成に変化が出てしまう。
だからこそ、この料理には「待つ」という行為が不可欠になる。

フランスのコンソメと顆粒コンソメの決定的な違いは、技法でも材料でもない。
時間に対する考え方の違いだ。


静かな朝の台所で、鶏ガラを丁寧に洗いボールに水を張るところからコンソメ作りは始まる。
完成された透き通った一杯の中には、時間と忍耐、そして素材への敬意が詰まっている。

優しい味わいにも関わらず力強さを感じるのはそのためだ。

さあ、まずはブイヨンを取ろう。
鶏の骨や牛のくず肉の鍋に入れて水をはり強めの火を入れる。
最初は出来るだけ早く温度を上げていく。
沸騰したら出てきたアクを丁寧に引いていく。
ある程度アクを取り除いたら香味野菜を投入する。
しばらくすると鍋の中では、玉ねぎの甘さがほどけ、人参の香りがにじみ出し、骨の奥に潜んでいた旨味が目を覚ます。
浮かんでは消えるアクをすくい取るたび、雑音が一つずつ消えていくようだ。
この工程は、味を作るというより、余計なものを手放す作業に近い。
穏やかな時間の中で、ブイヨンは少しずつ輪郭を得ていく。
ブイヨン作りは基本だ。
何度も作っていると途中で味見をして分かるのだが、鶏の骨によって味わいの出方が違う。

目指す味になったらブイヨンの完成である。

次の工程では、挽き肉と卵白に、温かなブイヨンを注ぐ。

やがて一度、ふっと沸く瞬間が訪れる。
すると表面には、まるで水面に浮かぶドーナツ島のように、固まった層が現れる。


濁りや迷いを抱き込みながら、その層は静かに役目を果たしていく。
ここでは、かき混ぜないことが何より大切だ。
手を出さず、ただ信じて待つ。
その姿勢そのものが、コンソメを澄ませていく。

最後は、3〜4時間の煮出し。
火は弱く、音も立てず、鍋はほとんど語らない。
時間だけが、ゆっくりと進む。
中では旨味だけが選び取られ、余分なものはすべて沈黙の中に閉じ込められていく。
途中で鍋を覗くたび、液体は少しずつ透明度を増し、色は深みを帯びていく。
それは完成に近づいているというより、完成以外のものが削ぎ落とされていく過程だ。

十分に煮出したら、そっと漉す。
最後に残るのは、驚くほど澄んだ琥珀色の液体。
華やかな香りはないが、口に含めば、確かな重みと余韻が広がる。
派手さのないその味は、長い時間を経たものだけが持つ静かな説得力を宿している。

コンソメは、急がない料理だ。
手を動かすより、待つことの方が多い。
だからこそ、一杯のスープの中に、作り手の時間そのものが映り込む。
鍋の底に残るのは、透明な液体と、少しの満足感。
それだけで、この料理は完成している。


<ブイヨンのレシピ>

4kgガラ
250g玉ねぎ
200g人参
180gセロリ
8000ml
4.0g粗塩
65gポワロー

<コンソメのレシピ>

牛挽き肉1500g
玉ねぎ(みじん切り)300g
卵白250g
ブイヨン4000g
胡椒20粒
香草お好みで