北海道のお弁当 道南編

函館

道南地方を旅していると、移動の合間に立ち寄った売店や駅で、なぜか弁当の前に立ち止まってしまうことがある。飲食店のように匂いが立ちのぼるわけでもない。それなのに、不思議と誘われる。気づけば包み紙の向こうにある味を想像し、この先の時間を少し楽しみにしている自分がいる。

函館を起点に、海沿いを進む列車や車での移動は、思った以上に長い。車窓に流れる景色を眺めながら、次はどこで何を食べようかと考えるうち、弁当という選択肢が静かに浮かび上がってくる。急ぐ必要はない。ただこの自由席に腰をかけていればいい。弁当さえあれば、いや、そこに少しだけ冷えた苦味が加わりさえすればこの時間が長引く方がありがたい。

道南の弁当は、派手さで語られることは少ない。けれど、ふたを開けた瞬間に感じる落ち着きや、口に運んだときの納得感は、この土地を少し学んだような気にさせてくれる。海と山が近く、暮らしと食が地続きであること。そうした背景が、言葉ではなく味として伝わってくる。気づけば噛む回数が増えている。ずっとこの味を楽しんでいたいんだ。

観光地を巡る記憶とは別に、移動の途中で食べた弁当のことを後になって思い出すことがある。道南の旅では、そんな静かな記憶がいくつも積み重なっていく。この先では、そうした旅の時間の中で出会った弁当について、少しずつ書いていきたい。

松前 海苔だんだん

松前町は松前漬けや松前藩といった名前でご存知の方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?

北海道の最南端にあるこの町は本州との距離も近く、海沿いに行けば青森県も望むことが可能だ。

そんな松前には海苔だんだんという、海苔とご飯を重ねたただそれだけのお弁当がある。

ただそれだけなのだが、筆者が一番好きなお弁当といっても過言ではない。

白米一粒一粒が磯の香りを移した醤油を吸い込み、そこに適度にバラバラとなった海苔が混ざる。

時々ガリっと砂を嚙むことがあるのだが、そこに自然を感じる。

それは苦労の末に収穫された情景を浮かべればそれすらも美味しい条件に思えてくる。

海苔だんだんようの海苔は町内で購入が可能。

おすすめはよねたさん。

海苔以外にもイカや昆布なども購入が可能で、もちろん配送も可能。

松前のお土産はこちらで見るといい。

また道の駅でも購入できる。

筆者はこの海苔(海苔だんだん)が好きすぎて、イタリアに持って行ったことがある。

当時お世話になっていたシェフにどうしても食べてもらいたくて、松前で購入して大事に持って行ったことを思い出す。

お米はシェフが台湾から買ってきたものがあったためそちらを使わせていただいた。

作り方はとてもシンプルで、ご飯をやや硬めに炊き、海苔を軽く炙って醤油をしっかりとつけ重ねていくだけ。
最低でも2段は必要。

イタリアに持ち込んだ北海道のワインを嗜んだ。

ちなみに北海道の赤ワインは、醤油や磯の香りと合う。

ワイン好きのシェフはたいへん喜んでくれた。




長万部 カニ飯

長万部は函館と札幌を結ぶ要所。
筆者は電車や車でここを通ることがしばしばある。

噴火湾に面した土地でカニやホタテが有名。

筆者も時々ここに立ち寄りカニ飯を買う。

カニ飯は長万部ではどこでも食べれる。

今回訪れたのは浜形水産さん。

店内にはもちろんカニが。

そして三重の有名なお酒も発見。

こちらは16時までなら店内にてカニ飯を食べることが可能。

長万部を通る予定がある方には是非とも立ち寄って、お弁当を食べてみてほしい。

期待はしないで。

そしたら想像以上に美味しく感じる。




函館 

函館駅のみがき弁当

函館から電車に乗って長万部を経由して苫小牧に向かう。
函館駅に向かう途中お腹が空いていた。

駅で何か買おうとふらふらしていると、食べたいものが見つからない。
何にしようと迷って、手に取ったのはビール。
ビールだけでもいいか。
と、思って改札の前に行くと駅弁屋さん。

他には目もくれずに手に取ったのがみがき弁当。
鰊の弁当だ。鰊か、そうか。ビールじゃなかったかな?

苫小牧に向かう電車に乗り込んで、まずはプシュッっと缶の蓋に手をかける。
ゴクゴクっと喉を鳴らす。
幸い隣の席には誰もいない。
この車両も比較的人は少ないようだ。
それもそうか。季節は観光客が最も少ないシーズン。

心置きなくビールが飲める。

出発を待たずに弁当の蓋も開ける。

とてもシンプル。

でもこれがまた見事な美味しさ。

少しずつ鰊を減らしながら時々数の子にも手を出す。

鰊の素朴な力強い味わいと、数の子のプチプチが止まらない。

次は日本酒にしよう。




阿佐里本店のすき焼き弁当

朝早く起きて、コーヒーを飲む。
朝食はとらない。

この弁当を食べると決めている時はいつだってそう。
出来るだけ空腹の状態にして胃袋に放り込む。

じわじわと広がる旨味が口の中だけでなく、喉を通り胃袋まで到達する。
その感覚がやめられなのだ。


朝のオープン前から行列が並ぶ。
お客さんの目的は大概コロッケだ。ここのコロッケもたしかに美味しい。

だけど私の目的はすき焼き弁当。
朝食を抜いたし、出来るだけ早く手に入れて食べたい。

具材それぞれに染み込んだ甘辛いタレ。
とはいってもくどい感じは全くない。
あっさりしているのだがしっかりしている。
この内容で¥1300なら安すぎる気もする。
今まで食べてきた弁当では間違いなくコストパフォーマンスが良い。

食べ終わるころにまた食べたいと思える。
たから函館の少し遅めの朝ごはんに迷うことはない。




ハセガワストアのやきとり弁当

皆さん大好きハセガワストアのやきとり弁当。
いろいろな味があり、なかには期間限定のものも。

久しぶりに食べることになったこの日、せっかくだから店内でと思いビールも購入。

ちなみにやきとり弁当専用のビールも売っている。

そしてさらにちなみにTシャツも売っている。

肝心のやきとり弁当。この日は辛いのが期間限定であった。
ビールと最高の相性じゃないか。
それにしよう。
喉が渇いてきた。
ピリ辛を想像する。

ゴクリ

唾を飲み込む。

呼ばれた。取りに行く。
席に運ぶ。

すると衝撃的な事実判明。

売らないでくれ。
それならビールを売らないでくれ。

そしてさらに衝撃的な事実。

この期間限定のピリ辛味。

全然ピリ辛じゃない。

激辛の一歩だけ手前くらい。

ビールが欲しい。

いや持っている。
ただ飲めない。

急いでかき込む。
久しぶりのやきとり弁当。
美味しいとかじゃない。
喉が渇いているし、辛い。

売らないでくれ。
飲み物はやきとり弁当専用のお茶でいい。

食べ終わり外へ出ると、気持ちいい風が吹いている。

ビールが旨い。

後日、ハセガワストアのやきとり弁当を食べる機会があった。
味わって食べた。